今回紹介をするウイスキーは2015年にスコットランドへ行った際に購入をしたものです。
僕にとってスコットランドという土地はとっても特別な土地です。
バグパイプはスコットランドの民族楽器。
僕の場合、ウイスキーからパブをやろうと思ったわけでなく、バグパイプを通して行っていたパブの愉しさからになるものです。そこにはいつも、ビールやウイスキーを飲み笑って会話をしている人がいました。
スコットランドで一番背が高い蒸留器(ポットスチル)
多くのウイスキーファンに愛され続けているグレンモーレンジ
スコットランドで最も背の高いスワンネック型のポットスチルが特徴で、繊細かつフローラルなウイスキーが生まれます。
やはり、スワンネックは長かったと言わんばかりのこの景色。圧巻でした。
蒸溜所自体が凄く可愛らしかったり、エレガントだったり様々な顔を見せてくれました。
グレンモーレンジのポットスチルは・・・なんと5.14mもの高さがあります。
なんと、その高さは大人のキリンと同じ高さと言います。というかキリンってこんなにも大きかったのか!?
というか・・・キリンの大きさが良く分かりません・・・!
この長さがグレンモーレンジの酒質を決める大切な要因となっています。重たいアルコール蒸気はネックが長いために上まで登りきることが出来ません。故に軽やかなアルコール蒸気が登り切るためグレンモーレンジ全体的なメインの印象のフルーティーでフローラルな成分を抽出することができます。
このフローラルな成分が、あの華やかなアロマを生むのですが、それを意図的に作るために、キリン同等の長さを持つポットスチルになっているという訳です。
特別なデザイナーズカスク(樽)
ウイスキーは僕らが味わうまでの長い時間を樽の中で過ごします。樽の中でウイスキーになる原酒は樽と直接触れ合っているので、その樽の影響をも直接受けます。だから個性派揃いのウイスキーは非常に楽しい飲み物なんですね。
ウイスキーに多大なる影響を与える樽。ここ数年はウイスキー需要と共に空樽の価格も高騰し、資金力の有無で獲得できる樽にも差が出てきているとも言われます。
2005年に始まった台湾のカバランは樽の質に徹底的にこだわることで有名で、寒冷地ではない土地でウイスキーを造るという型破りなことを成し遂げ、数々の賞を獲得し世界中にその名を認知させました。
スコットランドなどの寒い地域では、基本的に樽での熟成に3~6年という月日が必要とされています。が!カバランのある台湾という土地は夏には40℃近い気候が続くこともあるので約1年半で熟成できてしまうのです。
この早熟でありながら質の良いウイスキーを造るために、カバランは資本力を活かし、バーボン、シェリー、ブランデー、ワイン、ポートワイン、ラムなどバリエーションにとんだ樽という樽を世界中から調達しています。
カバランは樽へのこだわりが垣間見れる蒸溜所なんです。
そんな『樽』ですが、このグレンモーレンジは『樽のパイオニア』と称されるほど樽へのこだわりを昔から持ち続けている蒸溜所です。
まずは樽材としてふさわしい通気性を持つホワイトオークの木を、年輪の密集度を数えて選ぶという、なんとも気の遠くなる選定から始まるというから驚きです。
選ばれたホワイトオークは2年かけてゆっくりと自然乾燥をさせられます。スコッチウイスキーはアメリカのバーボンの空樽で熟成をするので、それをまずはバーボンメーカーに貸し出し使ってもらいます。
アメリカの法律では、バーボンについては以下の決まりがあります。
「原料の穀物中にトウモロコシを51%以上含み、80度以下で蒸留し、さらに内面を焦がしたホワイトオークの新樽で、アルコール度数62.5度以下で熟成したもの」
と定義して、その中に「新樽」とあるように、バーボンの熟成に使用できるのは新品の樽のみ。再利用をしてはいけないことになっている、いわゆる『使い捨て』なんです。
でも、この法律のおかげで、使用済みのバーボン樽が、スコッチウイスキーなど他のウイスキーの熟成にも盛んに使われるようになりました。
グレンモーレンジはバーボンメーカーに貸し出しバーボンを詰めてもらうことで、木の持っているタンニンや不要な要素を取り除きます。樽からバーボンウイスキーが抜かれ空樽になることで『デザイナーカスク』と呼ばれるグレンモーレンジのためだけの超オリジナル樽が完成をします。樽へのこだわりというか樽愛です。
さらにここまで時間をかけ、こだわり抜いた樽を、なんとも贅沢にも2回までしか使いません!
通常であれば3回以上の利用がされる樽を2回までしか使わないこだわりの理由は、バーボン樽由来の最大の特徴でもある『バニラ』のニュアンスを最大限に引き出し、滑らかな質感を得るためによるものです。
ミネラル豊富な泉の湧き水
グレンモーレンジは、スコットランドでも数少ない、硬水を仕込み水に使っている蒸留所です。
蒸留所が所有している「ターロギーの泉」の水を使いますが、ここの水は100年以上もの年月をかけて石灰岩と砂岩層で濾過された湧水です。
たくさんのミネラルを含んだ硬水を使うことで、グレンモーレンジらしいクリーミーな質感とフルーティーな味わいのウイスキーになります。
グレンモーレンジ15yソーテルヌウッドフィニッシュ(現地購入品)
アメリカンオーク樽で熟成され、その後ボルドーのソーテルヌ地方のワイン樽で後熟をして仕上げられたグレンモーレンジです。
ちょっと目減りして見えるのは・・・僕が飲んだからです(笑)
ソーテルヌ地方とは?
フランスの中の地域の1つです。ソーテルヌ地区はボルドー地方を流れるガロンヌ川の中流にあり、グラーヴ地区に囲まれたなだらかな丘と小さな谷のある地形です。
そしてこの地方を有名にしているものが甘口の貴腐ワインの醸造地域としてです。
ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイ、そしてフランスのソーテルヌと、世界三大貴腐ワインの産地の1つです。
ソーテルヌ(貴腐ワイン)とは?
ソーテルヌワインの特徴は、黄金色で熟成により琥珀色へと変化をすることがあげられます。
香りはアーモンド、ヘーゼルナッツ、マルメロ、マンゴー、パイナップル、桃のコンポート、マンダリンの皮、干しアンズ、、パッションフルーツ、蜂蜜等の多くの要素が折り重なります。さらに菩提樹やアカシア、ミモザ等の花、フローラルのニューアンスが加わった香りがあるともいわれます。
その味わいは力強く、若干ですが濃度がありとろりとしています。その特徴というべき残糖と酸味のバランスが非常に爽やかさがあります。
ソーテルヌは完腐してシワシワの状態となった葡萄のみを数回に分けて収穫し醸造をしますが、水分が非常に少なくなっているため生産量も少ないです。
同じようなニュアンスのものでアイスワインがありますが、こちらは凍ったブドウを使用して醸造をします。
このソーテルヌと、アイスワインは見た目は一緒なので区別するのは難しく、判断的には貴腐の匂いを感じ取れるかがポイントです。
ソーテルヌ(貴腐ワイン)に向いているブドウ
セミヨンと品種のブドウがソーテルヌにはよく使われます。
フランスのボルドー地方が原産とされる白ワイン用ブドウ品種です。明るめの黄緑色の果皮で、甘口から辛口まで幅広いタイプの白ワインに向いているブドウの品種です。
そして、セミヨンから造られるワインは、糖度が高めで、とても穏やかな酸があり、ドライフルーツやはちみつなどの甘くふくよかな上品な香りが特徴的で、その口当たりも非常に滑らかです。
まとめ
ここまでの下りから、上質な品質のデザイナーズカスクで熟成が始まり、ソーテルヌという甘めでドライフルーツや南国系フルーツのアロマが熟成に使われていた空樽にフローラルでスムースなグレンモーレンジが入れられて後熟される。
もう、美味しいニュアンスしか感じられないと思います。